RPAの導入を成功させる最大のポイントは、経営層と現場の作業者が双方の導入後すぐにRPAの効果を実感することです。
いくら世間でRPAは効果的と言われても、経営層が効果を感じられなければ、本格的な社内展開を実施するとう意思決定はされないでしょうし、現場の作業者が効果を感じられなければ、RPAを導入したとしても活用をしなくなってしまいます。
ですが、RPAの効果を感じられれば経営層も業務効率化のために本格的な導入という意思決定もします。
そして、現場の作業者が効果を感じられれば、どんどんロボットを作成・活用することになります。
RPAの導入効果を実感するためには
RPAの導入を成功させるためには、いきなり本格導入はせずに、まずはトライアル的に導入することがRPAの導入手順としては正解。間違っても、いきなり全社的な導入はしちゃダメですよ。まず失敗しますから。
トライアル的に導入することをIT用語でPoC(Proof of Concept:概念実証)と呼ばれますが、RPAの効果や自社内の環境での整合性を検証するためにも欠かせない作業だと言えます。
この検証をうまくできるかどうかで、その後のRPA導入の成否を分けます。
トライアルを実施するポイント
トライアルを実施する場合に最初に注意しなければいけないポイントは、どの業務をRPAで処理するか、ということ。
トライアルの結果をできるだけ大きく見せたいという気持ちから、基幹となる業務や時間短縮効果の大きそうな業務をRPAの対象業務に選びがちです。
しかし、この考え方は失敗につながれケースが多かったり、効果を感じられるまでの時間が長かったりするものが多いのが実際のところです。
これでは、早期に効果を実感したり、検証したりするというトライアルの目的からそれてしまいます。
トライアルではまずは、早期にRPAの効果を実感しやすい業務を選ぶこと。
これはMUSTですね。
では、具体的にどのような業務を選べば効果を実感しやすいのでしょうか?
トライアルの対象にすべき業務
トライアルの対象とすべき業務としては以下の3つの条件当てはまるかを検討しましょう。
- 大きな流れのある作業ではなく小粒の作業にすること
- ルール変更が少ない作業であること
- ロボットに任せた場合きわめて短時間
また、上記の3つの条件に加えて、現場で不満や不平を抱いている業務が多くでているものであればさらに良いですね。
まずは、短期感で効果が出やすい小さな業務を選択して分かりやすい成果を実感してもらいましょう。
トライアル時に対象とすべき業務例
給与計算
給与計算をする場合は多くの企業では給与計算用のソフトを使ったり、Excelの関数を使ったりして計算する場合が多いと思います。
こうした業務では転記作業が多く、RPAの対象業務としては最適な業務の1つです。
単純な作業を素早く実施してくれた際には、きっとRPAの効果を感じることができるでしょう。
集計作業
マーケティング部門などでは、データの集計作業をとることがよくありますが、それほど大きな流れのある作業ではなく、1つ1つの作業は単純で簡単なものであることが多いです。
ある特定のウェブサイトにログインし、データをダウンロードして、そのデータをExcelなどで集計しているような作業は本当に手間のかかるわりに、単純で人間がやる必要のない作業です。
また、ルール変更も頻繁にあるものではありません。さらに、ロボットに任せた時にはきわめて短時間で終了するケースがよくあります。
もし、自社に集計作業がある場合は試してみましょう。
経費精算などのチェック作業
提出された経費に異常やイレギュラーがないかをチェックする業務もまたRPAの効果が実感しやすい業務の1つです。
よくあるのは、交通費のチェック。
提出された交通費が適正であるかどうか確認するために、料金が表示されるウェブサイトなどを活用するケースがありますが、これをRPAに任せてしまうのです。
ちょっとした突き合わせだけの作業ですが、月末などの繁忙期には業務の負担になることがしばしばあります。
こうしたチェック作業もRPAの効果を実感しやすい業務の1つです。
RPAのトライアルでチェックすべき項目
RPAのトライアルでチェックしておくべき項目としては、
① ロボット化に不向きな業務の見極め
② 参照先のシステムや操作するアプリとの親和性
がります。
① ロボット化に不向きな業務の見極め
RPAは今のところ、定型業務にのみ使えるソフトで、非定型業務にはRPAを使うことはできません。
普段プログラミングの業務を担っている情報システム部門の人間であれば、何をRPAの対象業務とすることができ、何がRPAの対象業務とすることが出来ないかは分かります。
ですが、プログラミングの知識がない人の場合は、RPA化できる業務とできない業務の見極めは実際に使ってみて初めて分かるものです。
トライアル時にRPA化できる業務とできない業務の違いをはっかりと認識できるようにしておくことが大切です。
② 参照先のシステムや操作するアプルとの親和性
RPAを実際に稼働していくうえで、参照先のシステムや操作するアプリとの親和性も確認しておくことは重要です。
RPAを導入すると、多くの企業では基幹システムからデータを取得したり、外部のアプリにデータを入力したりしますが、こうしたデータ取得や入力時にエラーが発生しないかどうか等のチェックもトライアル時にしておくべきです。
その他のトライアル時にチェックすべき項目
また、RPAを本格運用した場合に、ロボットの台数がどのくらい必要になるのか、会社全体で活用するのか、一部の支店や部署だけで活用するのか等、RPAを本格的に導入した際のイメージを描いておくこともトライアル時にしておくべできでしょう。
(特に、拡張性やユーザビリティについてもチェックしておきましょう。)
さらに、RPAは一度導入した後に、他のRPAに切り替えるためには非常に手間がかかってしまいます。
本格的に導入する前に、他のRPAについても一定のリサーチをし、どのRPAが自社に最適なRPAかを確認しておくのもトライアル時には重要なチェック項目と言えるでしょう。
RPAのトライアル後、本格的な導入をする場合の流れ
RPAをトライアルで実践してみて、本格的な導入を考えた場合、どのような業務から始めた方が適切か?という問題がでてきます。
必ずしも唯一の正解があるわけではないですが、RPAの導入に成功している企業の一般的な流れとしては、まずはバックオフィス業務に含まれている作業で、付加価値を生み出しづらい、単純なオペレーションの一部をRPA化します。
そして、そのバックオフィスのRPA化が軌道にのったあとは、より売上や収益につながりやすいフロント業務のRPA化へと拡大していく、という傾向があります。
まずは、顧客との関わりがないバックオフィス業務で試し、RPAの活用方法の理解が深まったところで、顧客との関わりがあるフロント業務の分野にも活用していくイメージです。
RPAを導入する際のトライアルまとめ
RPAの導入したあとは、それを実際に運用するのはあくまでも現場になります。
毎日の業務をRPAのロボットが代行してくれることで、現場の負担が軽減され、そこで生じた余剰時間でより本格的な業務や新しい付加価値を生み出すような業務に移行できることが分かれば、積極的にRPA導入の協力者になってくれることでしょう。
現場がRPAの導入に積極的になってくれるためには、
「この業務ができるなら、あの業務もRPAを使えるんじゃないか?」
と思ってもらえるかどうかが大きなポイントになります。
つまり、現場の人間が自発的に自分たちの業務をRPAする機運が高まれば、積極的なRPAの活用へとつながり、結果的に業務の効率化・生産性の向上へとつながっていくことでしょう。
そのためにも、まずはRPAのトライアル時に小さくても、成果が出やすい業務から確実に効果を実感してもらうことが大切になってくるんですね。